潜入!コンテナ船 衝撃の事実 Vol.3

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FCL と LCL の違いについて

業界用語
【LCL = Less than Container Load = 混載】
【FCL = Full Container Load = フルコン or ワンコン(フルコンテナor ワンコンテナの略)】

Vol.1で「米国から日本への船には、ワインをはじめとして農産物(野菜・果物)や古紙などが、そして日本から米国への船には電化製品などが積まれているのが一般的」というお話をしました。

「LCL=混載」というのは文字通り様々なものをひとつにまとめて運ぶことで、一般的には温度調整しない「ドライコンテナ」が使われます。中身は機械類、引越し荷物、本…そしてワイン!そう、少量のワインを運ぶ時のほとんどがLCL扱いで運んでいます。 デリケートなワインを扱う心遣いや、温度管理を期待してはいけません。

もちろんリーファーにも混載は存在するのですが、チルドでも数段階に分かれフリーズの状態まで温度差を指定するリーファーコンテナでは、よほどタイミングがうまくあわないと実現しません。詳細は Vol.4で言及しますが、再三お話しているように「アンダーデッキ」 と指定しても必ずしも励行されないのが現実なのです。

一方、「FCL=フルコンテナ」は、ひとつのコンテナをひとり(一社)の 荷主がチャーターすることです。中身はたとえば干草だったり、ワインだったり…。「ドライ」「リーファー」ともに目的と予算に合わせていろいろな条件を自由に選択できます。

もうひとつ裏事情をお話すれば、ワンコン仕立てするためにはある程度数を集めなければいけませんから、頻繁に出荷している業者以外は、ワイナリーが実際に新ヴィンテージをリリースしても他のワイナリーのリリースを待つことになり、その間の保管が問題になることもあります。
品質管理はどんなステージでも手をぬいてはいけません。

Vol.2ではサイズのことも説明しました。ちょっとおさらいしましょうか。
コンテナ 長さ 積載量 ワインケース換算
20フィート 6メートル 17トン 600~700ケース
40フィート 12メートル 20トン 1250ケース

容量は倍なのに1250ケースしか積載しない40フィートコンテナを私達が使う理由は、ワインの周りに相当の空間を作ることによりコンテナ内の空気対流を促し、冷えすぎてしまうところと温度が高くなってしまう場所をなくすのが目的です。【狭いところに押し込められたワインを少しでも居心地よくしてあげる心遣いなのです。】

またパレット積みにするとスペースを無駄にしているように見えますが、こうする最大の理由はフォークリフトがパレットごといっきに運べるからです。作業効率が良いので高温の外気に長時間さらさなくてよいわけです。もちろん破損も最小限にとどめられます。

1箱ずつバラで入れる「手積み」だと、20フィートのコンテナでも頑張れば 1000ケース弱くらい押し込めますが、上記の説明でもう「自明の理」ですね。ぎしぎしに詰め込むのでコンテナ内の空気対流は全くなく、破損の危険性も高いのは当たり前です。仮に上段の1ケースが破損すると、ワインが下段までたれてきてかなりの数のエチケットも汚れてしまいます。積み下ろしの作業時間もものすごーくかかるため、ワインが可哀想です。

これはとくにグループを作って直輸入している業者が少しでも運賃を節約しようとする常套手段だったりするんですが…。(通関手数料は1ケースでも、1000ケースでも¥11,800という価格に変わりはないし)自分達でそういう積み方を指定しておきながら、破損した場合、仲立ちのインポーター or エクスポーターに「そこは泣いてもらって弁償してほしい」などと平気で言うところもあるのですから、自覚がないというかなんと言うか…。

さらにドライコンテナ&混載扱いで運んできても「リーファーで運びました」というシールをボトルに貼っている業者はたーくさんあります。 私はカリフォルニアに限ってではあるけれど、いつも産地のワイナリーやレストランで飲んでいるので、どんなふうに運ばれたのか一口飲めばすぐにわかります。渡辺ケイの舌はごまかせませんぞ。(もちろん最初に明言したように一部の業者を糾弾するのが目的ではないので、メールで「どこの業者か教えて」なんて訊かないで)

腑に落ちないことがあれば、納得できるまでしつこく訊くのが賢明でしょう。良心的なところ、もしくはプライドも持って本当にワイン専門のFCLにしている業者なら、きちんと答えてくれるはずです。

2年程前のことでしょうか、私の敬愛するシャペレー&タイタスのワインメーカー=フィリップ・タイタスが他のワイナリーの人達と一緒に来日した時、東京虎ノ門にあるヴァン・シュール・ヴァンで ワインメーカーズ・ディナーをやりました。一口シャルドネーを飲んだフィリップが、瞳を輝かせて言ったひとことは、本当に嬉しかった~。

「蔵で飲むのとおんなじ味だよケイ!5000マイルも離れているのに驚きだ。」

~つづく~

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