潜入!コンテナ船 衝撃の事実 Vol.2
通常コンテナには「ドライ」と呼ばれる常温で運ばれるものと、「リーファー」の通称をもつコンテナ毎に温度調整機がついているものの2種類があります。
リーファーコンテナとは、荷主が温度設定を指定する定温コンテナのこと。 日本国内で活躍しているクール便のように一律0~5℃と言うものではありません。 サイズは通常20フィート(長さ6m、積載17トン)、さらに40フィート(長さ12m、積載20トン)の大きなものもあります。 フィートが倍になるのに容積があまり変わらない…と不審に思われる方もいらっしゃると思います。一般に20フィートは重量のあるもの、40フィートは「がさのあるもの」というのが業界の常識なのです。
20フィートのコンテナには、パレット積みで約600~700ケース、40フィートには1250ケースのワインが積載されます。1パレット= 56ケース。 ワインの箱が荷くずれしないよう、通常の12本入箱で一段は、14ケース×4段の高さに積み上げ、シュリンクラップ(わかりやすくいうと、家庭で使うサランラップを厚く大きくしたかんじ)でぐるぐる巻きにして固定します。 1箱ずつバラで入れる「手積み」だと、20フィートのコンテナにも頑張れば 920ケースくらい押し込めますが、そうすることによるワインへの悪影響は【Vol. 3「混載&ワンコン」の違い】で詳しく説明したいと思います。
荷主が設定する温度はチルドや冷凍など様々です。たとえば… チルドはマイナス2-3℃=26-28F°(ビーフ)、3-4℃ = 38-40F°(野菜、果物)、5-8 ℃= 42-48F°(グレープフルーツ)、フローズンはマイナス20℃前後 (食肉、魚肉)そしてスーパーリーファーと呼ばれるコンテナは、なんとマイナス35℃(アイスクリーム)。 ワインは必ずセラーのように15℃前後に指定するというものではありません。「クール宅配便の落とし穴」でも指摘したように、ワインの大敵は 「急激な温度変化」。 VIVAが扱うワインは夏季は18℃、冬季は14℃に指定されていて、 諸作業時における外気温との差を極力少なくしています。
出港日前日夕方(カットオフ)までにターミナルに到着したワインは、ここで一夜を過ごすことになるわけですが、オークランド港ではマックス300本のリーファーコンテナを指定された温度でキープするための、電源供給ができる設備が整っています。 ドライコンテナとの一番の差は、港で炎天下放っておかれることがないという厳然たる事実。 航海中はもちろん、港でも1日2回「指定温度が保たれているか」 「リーファーが正常に作動しているか」人間がチェックしてまわります。 値段も違うのですから面倒見のよさに差が出てくるのも当たり前。 ちなみにドライコンテナは20フィートで米国西海岸から日本へ向けて送る場合$900前後、安い盟外船では$750のことも。リーファーは同条件で$4000前後です。
【Vol. 4 「運賃同盟船&盟外船」の違いと便宜置籍船の意味】で詳しくお話しますが、このリーファーの状態も同盟船と盟外船では雲泥の差があるのです。「リーファーコンテナ」で運んだ事実に偽りはなくても、運賃を節約しようと安い盟外船を使うと痛い目を見るというのは運輸業界の常識です。
コンテナを「セルガイド」と呼ばれる、中に区切りがついている枠の中にはめこんでいく荷役作業時間は1時間30本のコンテナが目安。 コンテナの四隅をガッとガントリークレーンが捕まえて持ち上げ、セルガイドにそって静かに降ろしていく作業が単調に進められます。 今回、取材した船のサイズでは、5時間で船がいっぱいになる約150本のコンテナを積載するのが究極の理想に近い目標です。
船内の様子も知りたいでしょう?これが8階建てのビルくらいあるんですよ。 正確には、「8層」というのですが、定員4人乗りのエレベーターまでついています。2、3階がエンジンルーム、最上階がオペレーションルーム。 すぐその階下に赤い絨毯がしきつめられた優雅なソファつきの船長室がありました。
今回取材したコンテナ船、
【 アリゲーター ウィズダム パナマックス型 2852TEU 全長245m 】は下層からハッチカバーまでの深いところ7~8段がアンダーデッキ。オンデッキはその上4段です。温度調整のきかないドライコンテナの場合「アンダーデッキ」の中でも【Sea Level = 喫水線】がベストな理由は前回お話しました。どこのポジションをとれるかも、いかにたくさん依頼しているお得意さんかで決まるのは否めない事実です。ワインの場合、エンジンルームや危険物から離れた喫水線は誰もが確保したいところ。 でも年に2~3度まとめて運ぶとか機械類や引越し荷物と一緒に混載にしている業者に、最善のポジションを確保するのはなかなか難しいのが現状でしょうか。先ほども言及したように、9日間の航海中総勢22人の乗組員達がリーファーに関しては1日2回、設定温度チェックなどを怠りなく励行してその品質管理につとめます。
何故、前述した重量のあるワインをあえて40フィートで運ぶほうがベターなのか、次回詳しく説明しますが、簡単にいえばコンテナ内の空気の対流を促し、ワインが息をしやすいようにしてあげるのが目的です。
おおよそのリーファーの概略、船内の様子、おわかりいただけましたか? だいぶ長くなってしまったのでこのへんで!