Vol.8 ナパ・ヴァレー・カレッジ ボトリング騒動の巻

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ユカリ 「他のお店、ボジョレーヌーヴォーとか特集してるよ!VIVAもやらなくちゃのり遅れるんじゃあ…」
ケイ  「……。教育がまだまだたりない(涙)!あれはフレンチ。うちは何?今日は私と一緒にボトリングにいらっしゃいッ!」
こうして9月30日、ナパ・ヴァレー・カレッジで、去年私達が造ったシャルドネーのボトリングをするため、弟子のユカリ嬢を連れていざ出陣。なつかしいクラスメートと再会を喜び、抱き合う時間もそこそこに作業は始まります。

ちょっと復習すると、私達のインストラクターは、あのパーカーが初めて満点を献上したカリフォルニアワイナリー「グロス」のワインメーカー、マイケルです。当然使うボトルもコルクもグロスからの調達品。「これ、スペクテーターに出してみようか、『今年のグロスです』って(笑)」と誰かが提案。「やめてくれよ、62点とかついたら売上にひびくぜ」と苦笑いのマイケル。でもマイケルの好きなシャンパン用の「プリ・デ・ムース」酵母を使ってきちんと仕上げたんだから悪くないけどなぁ。「VIVAのオークションに出してみる?」するとすかさず「入札なかったらみっともないからやめてください」だって。

なにしろ授業の一環ですから、30年前くらいの古式ゆかしい?方法でコトは進んでいきます。まず樽から大きなバケツ(のようなもの)にワインを移し、そこに長ーいチューブをさしいれます。外に出ているほうのチューブの端を口に入れて吸い込み(この行為をサイフォンするという)ワインがあがってきたところですかさずボトルの中に移しかえるわけですが…。マイケルは華麗にお手本見せてくれたけど、そう簡単にできないのが現実です。特別参加させてもらった私の愛弟子ユカリ嬢は、クラスをとったわけでもないのでそれは悲惨なことに…。加減がわかるはずもなく、ボトルに入る量より床にこぼすほうがよっぽど多くて(私が去年こぼしたインシグニア・ブレンドの比じゃない!)
ちなみに去年インシグニアに何が起きたか知りたい方はこちらへどうぞ

苦労して造ったワインがあまりにも不憫で、私も声をはりあげます。「あ~、もったいない…ダメっ、あなたはもうクビッ!」ユカリ嬢を後ろにさげて、私の番。初めてとはいえやっぱり私が手本を示しておくべきだった。口に含んだチューブからほんの少しやさしく息をすいこむように…「そっと吸いこんだじゃない!?」チューブの先をボトルに入れる間もないほどものすごい勢いで逆流してくるワインが口の中に容赦なく流れ込んできます。もう海でおぼれた時、水をガブガブ飲んでしまうようなあんな感じ。余裕すらないまま、まだまだカタいシャルドネーを飲み込み、むせ返り、そうこうするうちボトルはあっという間に一杯になり、溢れ出し…。ボトルが満たされてきたらバケツの中のワインと同じ高さに持ち上げ、流入する速度をゆるめる…頭ではわかってるけど見るとやるとじゃ大違いです。これ以上できないほどむせ返り、涙目で悪戦苦闘する私にサササーッとすりよる影。

ユ 「ケイさんもクビ?」
ケ 「そうかもしれない…」
スタッグス・リープで働くコレットは、さすがに私達より手馴れた感じでした…。「大丈夫よ、明日うちで手伝ってくれるんなら、こんなことイヤというほどやらせてあげる。でもCASK23には近づかないでもらおうかな(笑)」

とにかく素人が瓶詰めしているわけですから、ボトルの中のワインの量も一定するはずありません。少なすぎるボトルにはビーカーに入れておいたワインをつぎたし、多すぎるものは別のビーカーにあけていきます。

ワインが満たされるそばからコルキングもどんどん進みます。鼻歌まじりに「力」なんてこれっぽっちも要らないような感じで作業をこなすケント。彼はベリンジャーでセラーワークをしているらしく、こんなことは初めてのはずなのに何故か上手。「私もやりたい」「OK」…これもやっぱり結構パワーいるんだよな~。彼は椅子に座ってキュッ、キュッやっていたけど、女性陣は立ち上がり、手動のコルキングマシンに片足をかけ、渾身の力をこめてガッチャンってやらないときちんとコルクが入っていきません。

ワイン造りはどのステージでも重労働なんですね。「生産量の少なさ」でいえば、カルトワインも顔負けのわずか1バレル。これってたったの60ガロン=25ケース分しかできない数量です。やっぱり秋のオフ会「ゲットは至難!超極少量生産ワイナリーシリーズ」に持っていこうかな。
ユ 「お客様の入りが悪くなるから却下!」 カ~ン…。

※リポート内容は取材当時のものとなります

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