vol.2 インシグニア・セラーワーク

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David & Kay

前回はグレイス・ファミリーで収穫を手伝った私。今回はジョセフ・フェルプスでセラーのサポートです。今日の仕事はタンクから樽にワインを移すこと。私の担当は「Block BD 101-14」。ブルータス誌上でも『玄人のためのオーパス・ワン』と紹介された「インシグニア」用ブレンドのカベルネです。ドキドキ。

Insignia Blend

セラー内にあるタンクから直接ホースをつなげ、バルブで調節しながら樽に移していきます。もちろん全てフレンチオークの新樽。(安いアメリカンオークは$250くらいから買えますが、フレンチの上等な樽は$700くらいが平均的)。かなづちで樽をたたきながら入っていくワインの量を確認していくのですが、樽がいっぱいになるまでわずか1分あまり。ものすごい勢いで流れてくるのです。私を指導してくれたセラー歴5年というデービッドだって時々溢れさせちゃうくらいですから、私が<カンカン>なんて音を聞き分けて「あぁ、もうそろそろいいかな」なんて簡単にわかるわけありません。懐中電灯で中を照らすのがビギナーには一番。それだって、難しいなんてもんじゃありません。ここだけの話ですが、私は相当の量のインシグニアブレンドを床にも試飲させてしまいました…。もちろん私だってテイスティングしなくちゃいけないし。99年のヴィンテージが少なかったら私のせいだろうか…。この時点のワインは色素が非常に濃いので、樽にこぼれた分は間髪をおかず熱いお湯で溶いたブリーチを流しかけます。新樽をきれいに保っておくのもセラーの大切な役目のひとつですからね。

old barrel

インシグニアブレンドが終わると別のブロックにとりかかります。作業内容は同じだけれど、次のバッチは古い樽を使うので、洗浄済みのものをひとつひとつ丹念にチェックしていきます。鼻を奥までいれてクンクン嗅ぎまくる…。ここでマニキュアのような匂いがしたらアウトです。処分しなければなりません。空っぽの樽だって相当重いですから、処分といってもフォークリフトで持ち上げて、たいそうな仕事です。ちなみにボルドータイプの樽は一片の木の厚さが22mm、ブルゴーニュタイプは29mmと若干違い、このわずかな差が重量にけっこう影響してきます。ご存知でしたか?

Brix Tasting
Craig Sela

アシスタント・ワインメーカーのセーラはこのワイナリーに来て早6年。ジョセフ・フェルプスでは勤続年数の長い人が多く、彼女はまだまだニューフェイスとか。発酵中は毎日糖度をチェックし、その進み具合を確認します。収穫時24度前後だったブリックスは酵母に食べ続けられ、0度になったところで発酵は終焉をむかえます。品種はメルロー、この写真を撮影した時点ではブリックス5度。まだかなり甘さが残っています。そこへワインメーカーのクレイグが登場、「調子はどうだい?今年は収量は落ちたけど、クオリティは最高なんだ。いいワインになるぞ~」。ふたりともこぼれるような笑顔が印象的でした。きっと最高のインシグニアが2002年には出てくることを確信した私です。

※リポート内容は取材当時のものとなります

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