Vol.9-5 渡辺ケイと巡るミレニアム紀行 リポート【最終日】

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1)オーパス・ワン

いよいよ最終日、最後に訪れるワイナリーはオーパス・ワン。「作品番号第1番」というあまりにも有名な和訳で知られるロバート・モンダヴィとシャトー・ムートン・ロッシルドのコラボレーション。私が聞いた噂では、赤坂界隈の料亭で一番良く出るワインらしい…。友人の若おかみが以前教えてくれました。パルテノン神殿を思わせる概観は、各雑誌等で幾度も掲載されているのでご存知の向きも多いはず。ピラミッドを彷彿させる建物を設計したのは、ビル・プレラ氏。サンフランシスコ市内にそびえたつ、ピラミッド型の最高層ビル「トランス・アメリカ・ビルディング」を設計した建築家です。

オーパス・ワン バレルルーム

地下のセラーに一歩足を踏み入れると、いつも私が言うところの「アロマセラピー」
芳香な樽とワインの香りに全身が包まれます。ここのバレルルームは壮観です。上に積み上げるのではなく、アーチを描くようにずらーっと一列に並べられた100%新樽の数、1000!芸術的なセンスを感じます。

樽の真中をワインを使って赤くそめるのは、ボルドーの伝統。見た目にお洒落なだけでなく、フィルアウト(ワインを樽に注ぎ入れること)やタップ(試飲したり自然蒸発した分のワインを注ぎ足すこと)の時に空気が樽内に入らないよう溢れるくらいたーくさん注ぎ込むわけですが、このあふれたワインが樽にだらーっと跡をつけて見苦しくなるのを防いでくれています。

ホストのウエィン

よく見ると、いくつかの樽の上にクリスタルの置物がポコンと置いてあります。
「これなんですか?」←メンバーからとんだ質問
「なんだと思いますか?」とホスト役のウエィン。
「もしかして、このクリスタルの置物でがんがんたたいて、樽のふたをするとか?」←元ワインスクールの講師の発言!
「このクリスタル、ギフトショップで売ってるよ。ペーパー・ウエイトでしょ?」←ケイの発言

くすくす笑いをこらえるウエィン。
「タップが必要な樽の上に置く目印です。このクリスタルが置いてあればその樽は注ぎ足さないといけないって一目瞭然でわかりますから」オーマイゴッド!そうだったのか…!

紹介された時は「あなたがあの有名なケイ!お目にかかれて光栄です。オーパス・ワンのことなら何でも知ってるってスタッフから聞いてますよ。今日は僕、いらないんじゃないかと心配してました(笑)」とまで言ってくれたウエィン。
それなのに「ペーパー・ウエイトでしょう?ギフトとショップで売ってるよ。たしか$35」
たのむよ、カリフォルニアワインスペシャリスト、渡辺ケイ…。

だってホントに同じ形の売ってるんだから。しかもロゴ入り。
職をなくしたら、いつでもオーパス・ワンが迎えいれてくれることになっていたのにもうお流れね…クスン。

テイスティンググラス プレゼンテーション

いかに大切に果実が扱われるかの説明を受け(Vol.1グレイス・ファミリーのハーヴェストリポート思い出してください、よーく似てます)「では、その成果をとりあえず味わってみて」ということで美しくプレゼンテーションされたグラスに、ゆっくりと97年のヴィンテージが注がれていきます。なんとかぐわしいノーズ…!胸の奥まで深呼吸して、すい込みたくなるような官能的な香りです。

とにかくスタイルにこだわるオーパス・ワン。並べられたテイスティング・グラスの前に真っ白なクロスがさりげなく置かれ、その上に今日のホスト役「ウエィン」の名前が書かれたオーパス・ワンのカードが添えられる…。

ビッグワインに酔いしれ敷地内を散策し、このワイナリーでしか買えないオーパス・ワンのシスターラベル「オーヴァチャー」もゲットしてご満悦のメンバー。流れるように去っていく車窓の葡萄畑とマスタードに見送られ、ナパでの想い出を胸に一路サンフランシスコへ。

2)ディナー at ルビコン

今回最後のディナーは憧れのルビコンです。コッポラ監督=ロビン・ウィリアムス、ロバート・デ・ニーロが共同経営し、シェフソムリエにはあの世界最高峰のマスターソムリエ=ラリー・ストーンを迎えるサンフランシスコが誇る自慢のレストラン。

フレンチ・ランドリーの時に負けず劣らずお洒落にキメたメンバーを、自らエントランスに出てきて迎えてくれたラリー。ミスター・ボウタイの異名をとる彼のトレードマークは蝶ネクタイ。にこやかに、そしてひとりひとりに話しかけるようにエンターテインしてくれました。

「いつきりだそうかドキドキして食事どころじゃなかったの、実は!」彼のプライヴェートブランド『SIRITA』のエチケットをきれいに保存し、油性ペンつきで持参したカップルは念願のサインをもらってエビス顔。

「今日いいワイン見つけてきたんですよー」とラリーに報告するS君。
ラ 「銘柄は?」
S 「ロング・メドウ・ランチです」
ラリーのまゆげがピクリと動きます。急にとっても嬉しそう…。
フレンチ・ランドリーのキースと一緒。ラリーも米国人のソムリエなのであった。
ラ 「それは素晴らしいセレクトですね!果実味が卓越した僕も大好きな銘柄ですよ。ワインメーカーはキャシー・コリソン。つい先日もサンフランシスコの新聞を飾った有能な…」とまらないラリー。

S君、その銘柄選んだのはだーれ?いち早く倶楽部VIVAで紹介した銘柄だし、ラリーが熱く語る事実も、私のメルマガ読者なら知ってるよねー(と思ったけれど黙っていました。私ってオ・ト・ナ!)

ラリーもいいかげん露骨に顔に出すからなぁ。ずーっと昔に、ゲストのリクエストでマーカッシンを頼んだ時「またぁ?」って顔をして却下され、かわりに薦めてくれたのが、あのフラワーズ・キャンプ・ミーティング・リッジ。「これはマーカッシンに隣接した畑で果実は申し分なし。ヘレン・ターリーが当初は手伝っていたし、マーカッシンと比べても絶対ひけをとらない傑作だよ。僕は個人的にこのフラワーズのほうがずーっと好きなんだ」これが私とフラワーズとの出会いでした。その時からずっとファンです。

今回のラリーのおすすめは、同じヘレン・ターリーの造るワインでもぐっと価格がおさえられたマルティネリ。全員うなりました。まぐろのタルタルによくあうんですね、これが。このヴィンテージは絶対に手にはいらないでしょう。ルビコンでもいつまでリストにあるかわからないけれど、サンフランシスコにいらしたら是非飲んでみてください、きっとノックアウト!の美しいワインです。

みなさんのメインコースは仔牛のシュニッツェル。何を飲むか一人ひとり意見を述べて、その中からラリーにセレクトしてもらおうということになりました。残った候補は89年のマヤ、そして96年のアロウホ。私だったら絶対96年のアロウホだけどナ…。ラリーはなんて言うかしら?

「僕は96年のアロウホがいいと思いますよ」皆さん倒れそうなくらい感激して、だんだん表現の仕方も渡辺ケイに似てきました。
「うーん、あまり期待しすぎると…と思っていましたけど、不安は一口で消し飛びました」とはCさんの弁。圧巻でしたね。私がここでいろいろ表現するより、飲むのが一番。飲み頃になったら日本でのワイン会に持っていきますからみんなで楽しみましょう!

シメにチーズとDRCのグラッパをラリーにおごってもらって
「サンキュー、ラリー!」
「今度、エチケットのはがしかた、弟子に教えてあげるからね!」(他のソムリエがアロウホのエチケットをぼろぼろにしてしまった。)
すっかりお友達になったようです。

こうして全イヴェントを終え、ホテルまで無事たどりつきました。初めてのツアーよくがんばったね…みんなも喜んでくれてよかったよ。ユカリに電話しておこうかな…。ま、とにかくちょっとゆっくりしようっと…。ホテルの部屋でほっと一息つく私。

しかし!それは甘い幻想でありました。

「ルイスのシラー、めちゃくちゃおいしかったからもう1本開けちゃう!」
「ロバート・クレイグとオーヴァチャーも飲んじゃいましょう!」
「さっきショップで買ってきたアロウッドのレートハーヴェスト飲みましょうよ~」
「僕のキスラーは狙わないでくださいよ…」
「キスラーの1本や2本あけないで、日本男児どうします!」
酔いにまかせ?気の大きくなったメンバーたちは、最後の夜を惜しむように数々のワインにいだかれ、さらに天国に近いところへとのぼっていき…。
全員一糸乱れず団結して「はしがころげてもおかしい年頃」状態に突入し、世が更けていったのでした。こんな楽しいパーティ、どこでやったかって?決まってるじゃない、私のオ・ヘ・ヤ。

ディナーで飲んだワイン

SP ロデレール ル・エルミタージュ 94
CH マルティネリ マルティネリ・ロード 98
PN ウィンドワード 96
MT メティッセ 
CS アロウホ 96
DS ボニー・デューン、DRCのグラッパいろいろ

かけ足でご紹介してきた初めての試みVIVAツアー、いかがでしたか?本当に素晴らしいメンバーが揃ってくださってこの上なく幸せなツアーでした。感動して泣いたり、おなかが痛くなるほど笑ったりしながら、ワインへの知識や造り手の哲学を肌で感じとても大切な時間をみなさんとシェアできたことを本当に感謝しています。

そして残念ながら参加されなかった方も、このサイトを通して現地の雰囲気を感じとっていただけたらこんなに嬉しいことはありません。
長いシリーズ、おつきあいくださいましてありがとう!

※リポート内容は取材当時のものとなります

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