Vol.16 ワインも造り手で選ぶ時代

Ma Jolie Fille Pinotsqué > Archive > Vol.16 ワインも造り手で選ぶ時代

注目のワインメーカー&ヴィンヤード・マネージャー

Heidi

1. ハイジ・P・バレット

ナパのワインは彼女ぬきには語ることができないと言っても過言ではありません。選び抜かれた果実の特性を最大限に引き出す能力。目をみはるほど優美なワインに仕立てあげていく葡萄への愛情。彼女の柔らかな笑顔にとけこむ情熱と才能は、多くのワイナリーにとって何にもかえがたい憧れです。彼女が手がけるワイナリーは例外なくスターダムをかけ上がっていきます。95年にロバート・パーカーが満点を献上したダラ・ヴァレ・ヴィンヤーズのマヤ’92を造ったのは彼女。世界中の愛好家が求めさまようグレイス・ファミリー、これもハイジの作品です。そしてハイジの努力が誕生させたスクリーミング・イーグルは総生産量わずか200ケース、はからずも市場価格が$2,000にも跳ね上がってしまいました。ロバート・パーカーをしてワイン造りの女神と言わしめたハイジ。優秀なワインメーカーを輩出することで知られるUCデイヴィスで醸造学を学んだ彼女が、やがてどんなにお金をつもうと入手困難な幻のワインを造りあげてしまう比類なき才人になっていくことを誰が想像したでしょうか。ちなみにハイジの夫はシャトー・モンテレーナのワインメーキングを担うボー・バレット。ヴィンヤード29、ジョーンズ・ファミリーなどを手掛けています。

ハイジで選ぶワイン
■オークフォード
■パラダイム
■ショウケット
■ダイヤモンドクリーク
■ジョーンズ・ファミリー
■グレイス・ファミリー

2.ヘレン・ターリー

ハイジと並び双璧と称される天才ワインメーカー。ソノマに君臨する「マーカッシン」のオーナー、その名はヘレン・ターリー。ジンファンデルで名を馳せる「ターリー」のオーナーであるラリーのお姉さんです。シャルドネーはあくまで美しく清冽、そしてカベルネブレンドはどっしりと重厚なボルドータイプ。品種の個性をあますことなく引き出すタレントと、信念を貫きとおす姿勢には畏怖の念をおぼえます。

ヘレンの話題作
■ブライアント・ファミリー
■パルメイヤー
■カネパ
■マルテイネリ

3.ミア・クライン

近年台頭してきたのがミア・クライン。トニー・ソーターとチームを組むことが多い彼女のレジュメも目をみはるものがあります。そしてハイジの後をついでダラ・ヴァレを担うのもほかならぬこのミアとトニーなのです。質感にもっとも重きをおくことをモットーにしているというミア。彼女のプライヴェートブランドにセレンがあります。

ミア・クラインで選ぶワイン
■スポッツウッド
■ヴィアデル
■ダラ・ヴァレ
■マヤ

4.トニー・ソーター

ナパの筆頭ワインメーカー=トニー・ソーターの手にかかり、名を知られるようになったワインは枚挙にいとまがありません。かつてはルビコンやアロウホ、スポッツウッドなどのコンサルティングを担い、近年ではヴィアデル、ダラ・ヴァレ、モラーガなどそうそうたるワイナリーが名を連ねています。しかし1999年4月1日をもってモラーガを除くすべてのワイナリーから手を引くことになりました。ソーター自身が所有する「エテュード」に専念するため、そして新たなヴァラエタルに挑むためです。彼のニューブランドに大きな期待がよせられます。

トニー・ソーターで選ぶワイン
■エテュード
■モラーガ
■ルビコン
■アロウホ
■スポッツウッド
■ヴィアデル

5.デーヴィッド・エーブリュー

地元ナパで彼の名を知らない人はいません。デーヴィッドは名うてのヴィンヤード・マネージャー、つまり畑の一切の管理を任され、つかさどる大切な役割を果たす大御所なのです。「ワインは畑から」。言い古された言葉ですが、これ以上真実を端的に語るものはありません。どんなにワインメーカーの腕がよくても、もとになる葡萄の質が悪くてはけして魂をゆさぶるような魅惑的なワインはできないのですから。ワイナリーがもっとも心をくだき、投資をしなければならないのが畑なのです。デーヴィッドの畑のよしあしを判断する眼孔は鋭くアドヴァイスは実に適切。これまで多くのワイナリーが彼の助言とサポートを受けて成功をおさめています。

鮮明にご記憶の方も多いでしょう。パーカーが絶賛し、高得点を献上したのがきっかけとなり、オークションでフランスの5大シャトーを抜き最高値をつけたシンデレラ・ワイン、シャトー・バランドロー。瞬く間にそのニュースは世界を駆け巡りました。そして後日、その記録をあっけなくぬりかえてしまったのがデーヴィッドの管理のもとで栽培された葡萄からできたコルギンです。

アロウホ、コルギン、ヴィンヤード29、オリバー・コールドウェル、そしてジョーンズ・ファミリーと名だたるブティックワイナリーたちがデーヴィッドの妥協を許さないヴィンヤード・マネージメントの恩恵を享受しているのです。また彼自身のプライヴェートブランドもスペクテーターの五つ星ワイナリーに輝いています。

デーヴィッド・エーブリュー の話題作
■エーブリュー

6.エマニュエル・カミチ

リチャード・ギアを彷彿させる風貌、ワインをみつめる真摯な瞳。理想のワイン造りを語る情熱的な口元。このハンサムなナイスガイはいったい何者でしょう?日本のメディアでとりあげられることの多いラリー・ストーン氏と同格の米国では知らぬ人のないマスターソムリエです。1989年、初めての挑戦だったマスターソムリエ試験に合格。同年、「ソムリエ・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ、10年後の1999年には「ワイン・ディレクター・オブ・ザ・イヤー」に輝きました。UCデイヴィス校で醸造学、栽培学を修め、数々のワイン・コンペティションで審査員もこなす彼がワイナリーを設立したのが1995年。自分のブランド「MIURA」のワインメーキングに没頭するあまり、長く務めていたサンフランシスコ・リッツカールトンのシェフ・ソムリエを退いたのが一昨年のことです。

Schramsberg(シュラムスバーグ)などを経て、セインツベリーのワインメーカーとして五つ星のピノ・ノワールを造り続けるバイロン・コスゲ氏は、UCデイヴィス時代、エマニュエルのルームメイトでした。(セインツベリーでは、オーナー兼ワインメーカーとして訪日も果たしたデーヴィドとリチャードが前面に出ていますが、ヘッド・ワインメーカーはバイロン・コスゲ。ブレンドなど最終決定は彼の手に委ねられています)英文科だったバイロンが醸造家への道を歩みだしたのは「エマニュエルの影響が大きかった」といい、今ではかけがえのないエマニュエルの右腕です。

VIVAでも何度かご紹介している、パンツに隠し持ってきたと伝えられるラ・タシェの苗木を植えた「ピゾーニ・ヴィンヤード」。ピノ・ノワールの造り手が最も憧れる畑です。現在カリフォルニアではフラワースやピーター・マイケル、パッツ&ホールなど9つの実力派ワイナリーがここの葡萄を独占。とにかくその比類なき濃さとコクは経験しないとわかりません。現在、この畑の果実を使わせてもらっている、ということがその蔵のステイタス、実力につながるとも言われています。そして2000年のピゾーニで栽培される500cs分がエマニュエルの手に渡りました。地元もこの噂で持ちきり。当然はじき出されたワイナリーもあるわけで、彼の実力、名声がなしえた快挙です。2002年にリリース予定のこのピノ・ノワールにも大きな期待が寄せられています。

*「MIURA」(ミューラと発音)は、エマニュエルの祖国であるスペイン、伝説の闘牛(ブル)を育てた人物から命名しました。

エマニュエル・カミチで選ぶワイン
■ミューラ

※リポート内容は取材当時のものとなります

archive一覧に戻る