Vol.12-2 2002年ナパ・オークションの旅 第2弾

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BVでのディナー

  • BVのテーブルセッティング
  • Lot No. 74 ジョージ・ラツール
    ‘68&’70や’46ピノノワールが入った
    アソートメント

Vol.12-1ではいきなりメインイヴェントであるライヴ・オークションの結果報告をしましたが、Vol.12-2では2日目のディナーに時計を戻します。
ホスピタリティ・イヴェントと呼ばれる各ワイナリーがホストするランチやディナー。この日を指折り数え、はるばるやって来るゲスト達の肥えた舌を満足させるべく、シェフ確保のための攻防舞台裏が日の目を見る瞬間です。もちろんサーヴするのは自社銘柄新ヴィンテージ&ライブラリーワイン。プログラムの到着を待って、ゲスト達は懸命に内容をおいかけます。なにしろワイナリーによって招くシェフやスタイルなどバラエティに富んでいるので、誰しも「トップ・レストラン」が創る料理&お目当ての銘柄のマリアージュを楽しみたいと願うのは人情というもの。昨年はスポッツウッドとジョセフ・フェルプスをリポートしました。
DO YOU REMEMBER THAT ? かくして今年の私は「BV」と「アラウホ」に照準を定めたのでした。
今、最も予約のとりにくいレストランのひとつ=ラスヴェガスの最高級ホテル「ベラッジオ」内にある『ピカソ』から、ジュリアン・セラーノを招ぶことに成功した老舗銘柄の「BV」=「Beaulieu Vineyard」ボーリュー・ヴィンヤード。(現地では通称ビーヴィーと発音、仏語でBeautiful Placeの意)1900年設立、オリジナルのオーナーはフランス移民、そのトップラインの銘柄にもなっているジョージ・ラトゥールです。カベルネの名声が高いワイナリーですが、カネロスでのピノ・ノワール栽培を最初に始めたのがほかならぬBV。時は1946年、第二次世界大戦終戦の翌年、ワインメーカーは伝説のアンドレ・チェリチェフ、そしてクローンの名は「BV5」でございます。
ワイナリーでのみ購入可能な8月にリリース予定の限定ピノ・ノワール「マエストロ」や94年の「ジョージ・ラトゥール」と、愛を奏でるジュリアンのフルコースを目当てにゲストのリクエストが殺到したといいます。
ピカソ店内の壁を飾るのは、真のピカソの原画26点余。ここからそれまでの年俸の2倍の条件で引き抜かれるまで、SF市内にある「MASA’S」でその腕をふるっていたジュリアン・セラーノ。(ジュリアン去りし現在、「料理の鉄人」で坂井シェフをロブスター対決でやぶったロン・シゲールが「MASA’S」の総料理長におさまっています。ロブスター・ディッシュやクエールのサラダは絶品、SFへいらした際は是非ご賞味あれ!)今夜はどのような夢を与えてくれるのでしょうか。

会場はBV敷地内にある「ゲストハウス」。通常はワイン商やワインメーカーを招いての試飲会などに使われる豪奢な家です。手入れの行き届いた芝生に歩を進めると、オードヴルやフルートグラスをのせたトレイを持つにこやかな笑顔に囲まれます。
「ハロー、わたくしの名はエィミー。ワシントンからまいりましたの。今回で2度目ですのよ。あなたは?」
「はじめまして、ボブといいます。BVはずっと訪れてみたかったワイナリーのひとつでして。いやぁ感激です。」
グラス片手に仲良く握手をかわす光景がそこかしこで見られます。今年のテーマとなった「ワインのサーカス」を意識して、点在するピエロやサーカスのパフォーマーたちが芸を披露する中登場した紳士…。ワインメーカーのジョエル・アイクンが、今宵のメニューとワインを紹介しながらゲストを迎えます。以下、メニューとワイン、簡単にご紹介しましょう。

  • U-10 ディ・ボート・スカロップ
  • ラム・チョップ
    ジュリアン・セラーノ 総料理長

1)『アップル・シャンパンヴィネグレットのクラブサラダ』
●2000年のアンサンブル・ブランク(マルサンヌ、ルーサンヌ、ヴィオニエなどのブレンド)
●リザーヴ・シャルドネー
クラブの火の通し方がそのあまさを引き出した至宝の一皿。

2)『U-10 ディ・ボート・スカロップ』
●2000年マエストロ ピノ・ノワール
「U-10(ユーテン)」とは帆立貝のサイズを表し、これは1ポンド=450mg、ミディアムレアにソテーした帆立にリード・ヴォーのジュが絶妙にマッチしたジュリアンの腕が光る作品。このジュはウズラでも鶏でもなーんでも応用できそう(作れればだけど)。

3)『ウズラのファルシェ with マッシュルーム・リゾット ピスタチオ、フレッシュ・フォアグラとほうれん草をそえて』
●99年ボーゾー(Beauzeaux)
ウズラ好きの私は2人前いただきたい…と思ってしまったほど。ジューシーな肉に、ピスタチオとフォアグラの量・味つけともにこれ以上は望めまいというほどのバランスでサーヴされた逸品でした。

4)『ラム・チョップ ローズマリーのポテト添え』
●94 年&98年 ジョージ・ラトゥール・プライヴェート・リザーヴ CS
ラム好きにはたまらないあの独特のフレーヴァーが私は苦手です。今宵のラム、その臭みを感じさせなかった理由は、調理法はもちろんですが、エージングの期間とのこと。長期熟成させたラム肉はローズマリーの香りを含んで、コクがあるのに清々しい雄姿をみせていたのでした。

5)『アップルタルト・アップルサイダーリダクションとアップルパイ・アイスクリームと共に』
●マスカット・デ・ボーリュー
特筆すべきはデザート。甘いものが得意でない私がお皿をなめるようにして?たいらげてしまったラスト・ディッシュ。アップルサイダーを長時間煮詰めて作ったソースに、アップルパイフレーヴァーのアイスクリームが添えられたタルトは、これだけ林檎づくしでもしつこくならず、すべて違う表情をのぞかせる実に繊細な仕上がりでした。

ワインクイズに正解した人に、今夜サーヴされたワインがプレゼントされたり、各テーブルにマジシャンが訪れたり、炎を自在に操る美女がパフォーマンスを繰り広げたり…時間は瞬く間に過ぎていったのでした。美味なる食事とワインはすべての人をハッピーにします。これにエンターテイメントが加わればその相乗効果は計り知れません。この夜をしめくくるシェフとオーナーの挨拶に、コンサートさながらのスタンディング・オヴェーションで迎えるゲスト達の姿が印象的でした。

ちなみに今年の「ファー・ニエンテ」は、ゲスト招待数100人、イタリアからフェラガモがやって来て、すべての女性のゲストにはスカーフ、男性にはタイがお土産として渡されたそうな。

ホスピタリティ・イヴェント会場に
出没するサーカス

「シャペレー」「ブライアント・ファミリー」「デーヴィッド・アーサー」「ハリソン」。
これらのワイナリーの共通点は何でしょう?
:プリチャード・ヒルに畑を有すること。
29号線からレイク・ベリエッサに向かう道を折れて、くねくね道をひたすら走り、どんどんのぼったところにあるヒルサイドの畑。カリストガからナパのノースサイドまで見渡せるほど標高の高いところです。この4ワイナリー合同のディナーは、今回の一番人気でした。なにしろスペクテーターのレストラン部門、総合評価で全米一に輝いた「チャールズ・トロッター」の総料理長(フードの評価は「フレンチ・ランドリー」が頂点を極めましたが、ワインリストでは「チャールズ・トロッター」が大きく水をあけ総合得点でトップに。現在はSFのルビコンで活躍するラリー・ストーンが以前働いていたところです)と、「President of the Court of Master Sommeliers」のフレッド・ディムがカップリングされている、招待ゲスト数わずか35席の夜でした。

ふたたび、オークション会場に戻って、ディナーやランチへのいざないはこちらから

※リポート内容は取材当時のものとなります

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