Vol.11-2 お待ちかね オークション速報 第2弾
21st NAPA AUCTIONナパ・オークションin 2001
Ode to Napa Valley
お届けしている世界最大規模のワインチャリティ・イヴェントでは、それはそれは大勢のボランティアが働いています。その数、総勢1,000人あまり。
ホスピタリティ・イヴェントと称し、すべて自分たちのコストでランチやディナーを自銘柄ライブラリーワインつきでサーヴするワイナリー陣はもちろんのこと、1,000組からの招待状を世界中に郵送する人、オークションに出品されるワインを搬送する人、炎天下で駐車場の交通整理をする人、具合の悪くなった人を手当てする人、そして…今夜のGALAディナーでは、2,000人のゲストに一斉にサーヴするために、総料理長を筆頭に17人のトップシェフ&メイトレD、200人のキッチンスタッフ、さらに200人の給仕する人たち…よくぞこれだけのビッグプロジェクトを成功させたものだと感服します。
ミセス・マルグリット・モンダヴィはスピーチの機会がある度に、彼等への感謝の気持ちを忘れずに言葉にします。自分がメインステージに立っても、けしてサポートしている人たちの力と思いを忘れないのはさすがです。もちろんその度にゲストからも、ボランティアへの心からの感謝の気持ちをこめて割れんばかりの拍手がわきおこります。
*『初日のディナーをどのワイナリーにするか=お目当てのワインはいうに及ばず、どこのレストランをケータリングしているかで選ぶゲストもかなりの数にのぼる』というお話しを前回しましたね。
わずか1週間たらずで完売するカップルで$2,500也のチケットを手にした人達は、招待状と一緒に送られてくるブックレットを読みながら「リクエストカード」にどこのワイナリーに行きたいかを書き込んで返送するのです。当然ずーっと何年も通い続け、サポートしてくれている「常連」のリクエストは優先順位が高くなります。もちろんハイ・ビッダー($100,000以上かな?)の記録がある人も優先されるわけです。
ランチョン
今日私達が行くところは、1982年セントヘレナに設立された「スポッツウッド」。オーナーのマリー・ノヴァクは先見の明があり、あのトニー・ソーター(ルビコン、ダラ・ヴァレなどを手がけていました)をワインメーカーに迎え、上質のカベルネを作ることで知られるようになったワイナリーです。現在のワインメーカーはローズマリー・ケークブレッド。人あたりは柔らかいのに、しっかりとしたワインを造るその情熱、自分の信じるものを静かに伝えてくれる彼女をひと目で好きになりました。
招待された場所はワイナリーではなく、オーナーの自宅。やはり心うたれるのは、庭にあるテニスコートやプールではなく、敷地続きに広がる36エーカーの畑でしょう。ワイナリーなのだから当たり前?いやー、でも20年前セントヘレナに移ってきた時、今日の姿を想像するのは難しかったでしょうから、やっぱり広い「庭」がほしいと思ったんでしょうね。
上述した※『 』内の条件はもちろんランチにもあてはまるわけですが、私達はケータリング先をうっかり見逃していました。よーく見ると『オーナー、マリー・ノヴァクの娘ケリーが作る』と書いてあります。「行くところで差がつくんだからしっかり下調べしないとね」ベイエリアの中央新聞にワインコラムを持つジャニスの言葉が思い出されます。ふーん、ダラ・ヴァレはリッツ・カールトンって言っていたけれど、スポッツウッドは家庭的な雰囲気でやるんだ。ふーん、ふーん…。
と思ったら大間違い!!全米一とうたわれる水準のナパで美食の限りを尽くしている(ホントォ?)渡辺ケイもうなるほど、どのディッシュもお・い・し・いー!娘のケリーは自分でケータリング会社をおこしたほどの腕前、プロのシェフだったのです。正直言って、ナパに点在するいくつかの有名レストランよりも素晴らしい、と私には思えました。今度イヴェントをナパでやる時は、必ず!絶対!彼女に頼もう!と心に決めたぐらいです。
スポッツウッドの庭で有機栽培した野菜をたっぷり使ったお料理をちょっとご紹介しましょう。
・バジルとゴートチーズをのせたサンドライド・トマト・タルトレット
・パンセッタを巻いてグリルしたタイガープロウン(海老)
・ローストした一口サイズ新じゃが、サワークリーム&チャイヴ詰 キャビアをのせて
ジンジャーと胡椒風味のサーモン、カベルネ&バルサミコ酢を煮込んだソースかけ
海老はグリルするまで、香草、ガーリック、ライム、スポッツウッドのオリーヴオイルにつけてありました。
キャビアの量は多ければいいというものではありません。下品にいっぱいかけすぎると、ただしょっぱいだけで新じゃがの味が隠れてしまうでしょう。どれをとっても、注意深く計量したのではないかと思うほど均一にのせられた完璧なベルーガキャビアの分量に脱帽。
サーモンはもしかしたら米国生活11年、今までで一番おいしかったかもしれません。皮はぱりっと、身はミディアム・レアで、少しだけかかっていたセロリルートのピュレーの見事なこと!
チーズなんて私の好きなアジアゴが出てきてすっかり大ファンになってしまいました。よーし、次のVIVAツアー、ワイナリーでホストするディナーはケリーに頼もう!(いつやるの…?)byユ
サーヴされたワイン
・ソーヴィニヨン・ブラン 2000
・カベルネ・ソーヴィニヨン 91、93、97
・リンデンハースト カベルネ・フラン95
あまりの美味しさに珍しく残さずいただいてしまった私の次の心配は、今夜のGALAディナー。はたしてどうなることやら…
GALAディナー
会場は恒例の高級リゾート=メドウウッド。殿方のほとんどはタキシード姿、女性はもうみなさんっ…!「ワタクシこそハリウッドのスターに負けないほどのイイお・ん・な」というかんじで、サンフランシスコ・オペラとシンフォニー、そしてロングラン・ミュージカルの観客を総動員しても追いつかないほどゴージャスな装いです。ミキモト、アスプレイ&ガラード、シュリーヴetcの本店を全部結集させてもこんな宝飾品は集まらないやもしれません。入り口で挨拶するモンダヴィ夫妻と言葉をかわすために並ぶ列のまばゆさは、パリコレのドレスが一堂に会したといっても過言ではありません。挨拶が終わると、トレイに載せて運ばれてくるシャンパンとオードヴルで明日のオークションのこと、去年の噂話、各ワイナリーでのもてなしぶり…1年ぶりに会うオークションフレンズの話題は延々続きます。女性は帽子をかぶっている人が多いので、ハグしたりキスするのも一苦労、あちこちで嬌声があがります。
いやー、馬子にも衣装とはこのこと。ふだんポロシャツ姿しか見たことのないワイナリーのオーナーやワインメーカー達がドレスアップしてるから、容易に見分けがつきません。
「ハーイ、ケイ!きまってるじゃないか」振り返ると、あ!私の大好きなお調子者の?デーヴィッド・アーサーが黒いタキシードに身を包み…なんてステキなの、カッコいい!とても50歳には見えない、ハンサムでダンディなデーヴィッド。私がナパで一番ハンサムと信じているプランプジャックのジョン・コノーヴァーはそのまま(演技ができれば)銀幕のスターになれそう…!ダラ・ヴァレの直子さんもシックな黒のドレスをまとい、圧倒されそうな大人の女性の雰囲気&貫禄たっぷり。おぉ、フロッグス・リープのジョン・ウィリアムスまでタキシードを着ているではないか。あ、私ですか?それは…渡辺ケイはどうもセクシーにはほど遠かったみたい…。
夜の7時はまだまだ明るいナパの夏。イギリスから初めての参加という美男美女のカップルは、まだ残る陽射しを受けて目がつぶれそうなくらい真っ白なドレスとタキシード姿。そう、赤ワインこぼしたらどうしよう…なんて考えてはいけません。一夜限りしかまとわないドレスを持つ、という贅沢を知りえる者だけが楽しめる最高の装いです。
この上なくきらびやかな2,000人ものゲストの舌を満足させるべく、選ばれた今夜の栄えある総料理長はウルフギャング・パック氏。ピンと来た方はかなりのツウです。そう、あの「スパーゴ」のオーナーシェフ。ハリウッドのお店をたたみ、ビヴァリーヒルズとラスヴェガスに進出。成功を手中におさめた料理界の憧れの的、日本にも六本木にそのお店を構えています。そういえばVIVAが4月5日に代官山のタブローズでオフ会を開催した時、偶然お店に食事に来ていました。私のブラザー、アキラも嬉しかった事でしょう。
ディナーテーブルもあらかじめ振り分けられています。各テーブルにはホスト役のワイナリーオーナーやワインメーカーが必ず座り、そのワイナリーの「3リッターボトル」がサーヴされることになっています。これもゲストの楽しみのひとつ。お食事をいただきながら、ワイナリーの歴史やワインにまつわるお話しをじっくり聞けますものね。一昨年はダラ・ヴァレ、昨年はアケイシア、そして今年はデーヴィッド・アーサー。ずっとラッキーな私達です。
肝心のお料理なんですが、これがまた美味だったので驚きました。やっぱりこれだけ大勢の人数分をこなそうとすると(しかもディナー会場は野外のテントの中!当然キッチンも仮設のテント内)どうしても「それなり」の味になってしまうわけで、ゲストもそう期待はしないのが常です。しかし今年はすごかった。ウルフギャングの指揮下、素晴らしいチームワーク。まず目で楽しませ、舌をとろけさせる絶品の数々でした。一口運んだだけで、あちらこちらから感嘆の声がもれます。「まぁなんて美味しいスープだこと」「ロブスターの火のとおり方が絶妙だ」「コーンの甘みが生き生きしたリゾットね」「このラム臭みがないわぁ」
食事の後はダンスタイムと相場が決まっています(米国では結婚披露宴でもダンスはかかせません)そろそろ、そんな時間かなーと思っていたら、今年はちょっと違ってました。20年前このオークションを始めた時、モンダヴィ翁が着たというTシャツをやおら持ち出し、ステージにあがった御仁がいます。オークションが20年も続いていることに感謝を述べた後、おもむろに「$100でどうだ!」しばし何が起こったのかわからず呆気にとられ顔を見合わせるゲストたち。もしかして明日の予行練習…?気づいた後はもうすごかった。一回洗ったら、色落ちして絶対繊維がぼろぼろになったあげく、二度と着られそうにもないTシャツ一枚(きっとそんなことする人はいませんね…。額に入れて飾るのかしら…?)に、入札価格がみるみるせり上げられていきます。$1,000の声を聞いた時のざわめきはまたたく間に過ぎ去り、$5,000の大歓声もかき消され、$10,000の値がついた時、私は「これは絶対に本番じゃない。ただ練習しているだけに違いない」と信じていました。調子に乗った御仁、どんどん値をつり上げていきます。まるで極上ワインでいい気持ちになったゲスト達の心をみすかしたかのように。結局着飾った紳士淑女の絶叫する中、$17,000で落札されたモンダヴィ翁のサインが入った古ぼけたTシャツ。シャツに200万円は出さないでしょー。後で酔いがさめて後悔してもしーらない、なんて庶民的なことを考えてはいけません。ここは別世界なのですから。前夜祭がこれだから、明日が思いやられる…
メインイヴェントのライヴ・オークションの模様は完結編で。
※リポート内容は取材当時のものとなります