Vol.10-2 白熱 バレルオークション速報 後編

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クリスティーズから送られた名物オークショニエ=フリッツ・ハットン氏が壇上に現れると、やんややんやの大喝采。彼は場を盛り上げる大天才。時には歌い、時にはバリトンであおり、このへんでやめておこうかなぁと思っても彼の巧みな口上にのせられ、ものすごい価格で落としたビッダーは枚挙にいとまがありません。
さてさて会場に集いし450人、そのうちパドル(入札札)を握るのは235人。パドルを頭上高く持ち上げ左右に振る準備運動をすませ、いつでも落札できる体制は整いました。私もやる気マンマン、どきどきしてきたゾ。ものすごいスピードで進行されていくオークションは、慣れていないと落札するのも大仕事です。落札単位はクオーターバレル(5ケース)が中心。中にはハーフバレル(10ケース)やモンダヴィのようにフルバレル(20ケース)なんてロットもあるので、数量は要チェックです。そして最低入札価格は、各ワイナリーとも一律5ケースで$1,000換算からのスタート。
値段がつりあがるにつれてパドルの数がひとつ減り、ふたつ減り…最後まで頑張ったビッダー(入札者)が、”You win!”のかけ声とともに、熱望していたワインを手にすることができるのです。なんといっても今落としても受け取るのは早くて今年の秋、遅いところは2004年の秋です。下手な買い物はできません。

注目株のアリエッタからは2001年秋引渡し予定の【メルロー&シラーのブレンド】、ルイス【プレミエ・キュヴェー】、ロバート・シンスキー【畑厳選ピノ・ノワール】、ジョセフ・フェルプス【エステート・カベルネ&シラーのブレンド】、ベリンジャーはなんと2004年4月引渡し予定【ハウエル・マウンテン・カベルネ】など、期待高まるワインが目白押し。
毎年持ち回りで順番が回ってくる実行委員長「Chair’s Lot=チェアズロット」は1番と決まっており、たいていご祝儀価格で高値がつくのが慣例です。今年は一躍トキの人となったヴィアデルのプティ・ヴェルドー&カベルネ・ブレンド「V」。$28,000なり。誰もが最高値と信じて疑わなかったダラ・ヴァレは余裕の$35,000!しかし今年の記録更新は、ハプニングの【ルイス】でした。
VIVAでイチオシのルイス、オークションが始まる前のこぼれ話をしましょう。オーナーのランディ・ルイスと話し込んだ私は、衝撃的な事実にショックを受けました。あの天才ワインメーカー=ポール・ホッブスが98年を持って去ってしまったとのこと(涙)!だから98年まではみなさんが大好きな、そして約束されたクオリティが実証すみ。でも99年からどうなんだろう…と不安がよぎりました。(VIVAのサイトで扱っているのはぜーんぶ98年までのもの。よかったよ~)
というのも、ピノ・ノワールの王者「ウィリアム・セレィム」、オーナーシップ&ワインメーカーが変わった後の初リリース98年のヴィンテージは散々だから。プロの間の合言葉は「セレィム買うなら97年まで」。これ常識です。異口同音に、98年はさわらないほうがいい…というのが業界中蔓延していて、これからのセレィムは苦しい時代を迎えることになるはずです。
もちろん、ワインメーカーが変わっても持ちこたえるところはありますよ。でもダラ・ヴァレはハイジ・バレットからミア・クラインに、ルビコンはトニー・ソーターからスコット・マクロードに、それぞれ「ワインメーカー」が変わったわけです。ルイスの場合、ポール・ホッブスからいきなり元レーサーのオーナー、ランディ・ルイスでしょ…ふとウィリアム・セレィムのことが脳裏をよぎり、つぶやく私。「今までこんなに愛したきたルイス、これから大丈夫かなぁ…」正直な気持ちでした。それなのにプロが集まるオークションで何故ダラ・ヴァレを抜くような高値がついたのか不思議でしょ?
VIVAの長年のファンなら知っていること…業界人が口をとざしている事実を白日のもとにさらすコワイものなしの渡辺ケイ。今回もシツレイします。

ワイナリー・オーナーのサインで
埋められたバレル

競り続け最後まで残ったふたりは、明らかにオークションに参加するのは初めてというかんじの日本人でした。意思表示を表すパドルは、入札したい時にあげたらすぐ下げる。これは入札時の常識です。あげっぱなしだと、オークショニエがものすごい勢いで入札額をつりあげていくので、そんな無謀なことはしないのが普通なのです。しかしこのおふたかた、ずっと挙げっぱなし!光りのような?早さで数字を(しかも英語で)まくしたてられて、おそらく入札価格がいったいどこまであがったのかもわからなかった模様です(後で聞いたのですがホントにわからなかったらしい…)気がついたときには、$38,000までイッていたのでした。いや~真実は小説より奇なり、すごい顛末です。
この日のトップビッダーは、ニュージャージーから来たワインショップのオーナー=ゲーリー・フィッシュ氏。「どの銘柄をゲットするか狙いを定めてきたよ」と笑う彼が手にしたのは、プランプジャックとシェイファー。プランプジャックとは狙いどころがシブイですね。彼はシェイファーに$32,000つけていました。VIVAも憧れのコングスガードの特別ブレンドを落札してきました。受け取る時期がきたらみなさんにお届けします、お楽しみに!
こうして今年もさまざまなドラマをうんだプレミア・ナパ・ヴァレー2001。合計735ケースのワインが落札され、収益金総額も過去最高の$920,800。各ワイナリーもトレーダーたちも、イヴェントが終わってほっとするのも束の間。次回はどんなブレンドが出るのか、早くもプロの心は来年のオークションに向けられているのでありました。

※リポート内容は取材当時のものとなります

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