Prologue

Hundred Acre Bottles

2003年9月に、Vol. 134でお伝えした『100 ACRE ハンドレッド・エーカー』がついに日本に上陸、正規代理店から輸入されてきました。

全ての数字「100」にこだわった、このワイナリーのデヴューをセンセーショナルにしたのは「007 OPTION CASE」=【ポリプロピレン(電気絶縁体)、施錠、エアシールド、完全防水ミリタリー級ブラックケース】でしょう。

次々できるワイナリーの中で頭ひとつ抜きん出るためのマーケティング戦略としては成果をあげたようです。どんなに素晴らしいワインでもその素晴らしさの理解を求めるにはまず飲んでもらうことがスタートですから、これは非常に重要なことであります。

007 Option Case

【007オプションケース】は衝撃に耐えるのはもちろんのこと、熱や冷気に影響されず気圧の変化にもびくともせず、おそらくは大西洋を漂流しても問題なし。砂漠を極限スピードで走ってもトランクの中で余裕綽々らしい。

もちろんフツーの人はワインとセットで買わなくてはいけません。しかし例外あり。ダタになります。
もし、貴殿がこういう方なら ↓
【米国・英国の政府or軍に所属しコンバットゾーンに配備されている、もしくは特務に就いている】(にもかかわらず、ワインが飲みたい人)

「007 OPTION」のリクエストなんて、はたしてあったのか?
失礼ながら素朴な疑問をぶつけてみたところ、驚愕の事実が判明。予想をはるかに上回るオーダーがあり、相応に用意したケースでは足りなかったとのこと。どこでどう情報をつかんだものか、中東でスペシャルフォースに就いている人もいたそうな。

Wine Making & Vineyards

Fermentation Tank

Sワインメーカーは、フィリップ・メルカ。ロビン・レイル率いる『レイル』や『ブライアント・ファミリー』『ヴィンヤード29』『クインテッサ』などの造りを担いボルドーブレンドを得意とする、ひっぱりだこのフランス人醸造家です。こだわりのカベルネ・ソーヴィニヨンに特化しており、畑の位置がこれまた素晴らしい。セント・ヘレナからハウエル・マウンテン方面に上がっていくとオーナー=ジェイソンの自宅があります。そして所有する畑はその自宅に隣接した水はけの良いヒルサイド。向かいには『Beringer』のトップキュヴェに挙げられる「Chabbott」が広がっています。おぉ、実にいい畑だー。ところで広さはどのくらい?100エーカーはなさそうだが…。答えは45エーカーでした。

2000年が初ヴィンテージ、生産量は1,000ケース。プライスも100ドル。おひとりさま1ケの限定品、ボトルが3本入る上述の「007オプションケース」も100ドルなり。唯一、100でないのが畑の広さ。では何故「100エーカー」なのか?

オーナーのジェイソン・ウッドブリッジはワイナリー名でずいぶん頭を悩ませたとか。ファースト・ネームの「ジェイソン」は、すでに『パルメイヤー』のセカンドで使われている。ラストネームの「ウッドブリッジ」は、言わずと知れた『ロバート・モンダヴィ』の廉価ブランド。さて、どうしたものか。

若い頃長距離ランナーだったジェイソンは、辛いことがあったり考えごとをする時には走ります。ネーミングを考えながら走っている時に脳裏をよぎったのが、子供の時分から大好きだった”くまのプーさん”のおはなし。
“くまのプーさん”、欧米圏ではWinnie The Pooh。子供たちはPooh Bearと呼び、人気のキャラクターのひとつとして有名ですが「100-Acre-Wood=100エーカーの森」が、英国人の著者が最初に世に送り出したストーリーでした。名前は決まった。エチケットはどうしようか。五つの星は、ジェイソンが愛する子供たちの数を表しています。

2005 Vintage

Kayli Morgan Vineyard

完璧主義者に見えるジェイソンは、現在ドーヴァー海峡のトンネルよりも横幅の長い巨大ケーヴを建設中。一般的に使われているタンクは熱を持ちすぎてフレーヴァーやアロマを壊してしまうからという理由で、クーパーと2年越しの交渉により、ようやく作ってもらえたという楕円形の2トン容量タンクが一列に並んでいます。

楕円形にすることにより表面積が大きくなる→上にあがってきた果皮(英語でこの場合Capと表現)の比率が大きい→熱が蓄積されない→フレーヴァーやアロマが壊れない。

タンクがある場所から中に進んでいくと見慣れない機械が目にとびこんできました。NASAが開発した空気清浄機は、UVで空気を浄化するという。この巨大ケーヴ、完成までには10年の月日を要するということであります。

彼の造るワインは、口に含むと「情熱」を感じます。一所懸命できることはすべて能う限りの力で取り組んで造った、ということが伝わってくる味わいです。チェリーの香りがうんぬん、というより、厚みと芳醇さ。そして質の良いタンニンと酸のバランスが完璧。タンザーは的確かつ公明に素晴らしい評価をしており、パーカーにいたっては「ポムロールのル・パンとシェバル・ブランがクロスしたような」などと、不思議なコメントを出しつつ95ポイントという高得点を献上。

アシスタント・ワインメーカーとムー

2004年ヴィンテージを試飲した『100エーカー』からの帰りに立ち寄ったセント・ヘレナ・ワイン・センターで、奥の特別セラーに$400の値をつけて鎮座しているのを見たときは驚きました。いったい日本での定価はいくらになるのだろうか。願わくば、VIVAのワイン会でシェアできることを願いつつ。

ハンドレッド エーカーのWEB サイトはこちらから
http://www.hundredacre.com/

※リポート内容は取材当時のものとなります

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